不遜な蜜月


(確か、隣にあの人が座って・・・・・・)


綺麗な男性だなぁ、と思った記憶がある。

高そうなスーツを嫌味なく着こなした男性は、真緒が勤める会社の社長に似ていて―――。


(それで・・・・・・ホテルの部屋に?)


途中の記憶が抜けている。

後、覚えているのはホテルの部屋で―――。


(あ〜・・・・・・肝心なとこは覚えてないくせに、余計なとこは覚えてるなんて・・・・・・)


恥ずかしくて、穴があったら入ってしまいたい。

そんな気分だ。


(それより問題は、あの人が誰か、ってことよね?)


行きずりの相手ならば、一夜限りと決め込み、忘れることも可能だ。

けれど、もしも同じ会社の人だったら?

もしも相手が自分のことを知っていたら?


「頭痛い・・・・・・」


しばらく禁酒しよう。

こんなこと、もう二度と経験したくない。