不遜な蜜月


目が合ったのは、爽やかな笑顔を浮かべた男性。

真緒は思わず立ち上がり、小さく頭を下げた。


「・・・・・・残業?」

「えぇ、まぁ」


人見知りをしないタイプなのか、男性は真緒に声をかける。


「君ひとり? もう暗いし、早めに帰った方がいいと思うよ」

「もうすぐで終わるので・・・・・・」

「そっか。無理しないようにね」

「はい、ありがとうございます」


真緒は微笑んで、またイスに腰を下ろした。


(今の人、見たことある気が・・・・・・確か、一ノ瀬・・・・・・一ノ瀬・・・・・・)


名字は浮かぶが、名前が出てこない。

営業課で、その優しい性格から女子社員に人気だと、以前、彩子が言っていた気がする。


(あの人も残業なのかしら?)


仕事一筋で彼女がいないらしいが。


「ん? メールだ」


携帯を開いてみると、姉からの短いメールが一通。


【カフェで待ってる】