不遜な蜜月


定時直前、真緒の元へ申し訳なさそうに部長が近づいてきた。

手には、如何にもお願いします、と言いたげなファイルが数冊。


「香坂。悪いんだが、これを頼めるか? 明日の朝までに・・・・・・」

「・・・・・・わかりました」


引き受ける真緒を、彩子が呆れた顔で見つめる。


「いいの? 完全に残業だよ。手伝おうか?」

「大丈夫」


仕事をしている内は、余計なことを考えなくていいから。

真緒はファイルをデスクの隅に置いて、携帯を手にする。


(姉さんにメールしとかないと。残業になったから、電話は無理そう、っと)


誰かに打ち明ければ、楽になるだろうか?

でも、簡単には口にできない。


「真緒? 私の話、聞いてた?」

「え? あ、何?」


彩子が怪訝な表情で、真緒を見ていた。


「差し入れの話。甘いのがいい? それとも・・・・・・」

「そんなに気にしなくても、大丈夫よ」


いらない、と断ったが、彩子は律儀にコンビニでオススメだというチョコレートと紅茶を買ってきてくれた。