不遜な蜜月


けど、追いかけて掴んだ手を、また離されたら?

心が冷えていくあの感覚は、もう嫌だ。

癒してくれるのは―――。


「真緒・・・・・・」


手を伸ばして届くのであれば。

君がこの手を握り返してくれるのならば。

きっとそれだけで、この心が温かくなるのに。










階段をゆっくり一段ずつ降りている自分に、真緒は笑ってしまう。


(ヤだな、私。期待してるみたい)


追いかけて来てくれるかも、なんて。


(そういえば、階段から落ちそうになって、助けてもらったっけ)


あの時は、好きどころか友好的な関係でさえもなかった。

こんな短い期間で、人の心って変わるんだ。


「・・・・・・お母さん、頑張るからね」


お腹を撫でながら、自分の部署へ戻る。


「あ、香坂さん!」