不遜な蜜月


彼女は、今隣に座って話している相手が、その作り笑いをしている社長だと、気づいていない。

つまり、彼女は社長の気を引きたくてそんなことを言ったわけではなくて―――。


「自分が癒す相手になろうとは、思わないのか?」

「私が? ありえないわ」


グラスの縁を指でなぞり、真緒が苦笑する。


「私と社長じゃ釣り合わないし。何より、私は社長に気づいても、社長は私に気づかないもの」


真緒自身、それなりに整った顔立ちをしていると思うが、特別美人というわけではない。

理人のように、ただそこにいるだけで視線を集める人間とは違う。


「もしも、社長が君に気づいたら?」

「ふふふ。もしも社長が私に気づいたら、それはきっと、一生分の運を使い果たしちゃった時ね」


おかしそうに笑う真緒を、理人は目を逸らさずに見つめる。


彼女は、自分の周りで言い寄ってくる女性のように、着飾っているわけじゃない。

それでも、そんな着飾った女たちより、魅力的に見えるし、興味を抱く。