そんな美紗の肩を乱暴に掴み、振り向かせる。


「必死な顔ね。そんなに私と会ったら困るの?」

「美紗っ」


理人の手を払い、美紗はイスに座り直す。


「あぁ、困るんじゃなくて、焦ってるのね。私が彼女に妙なことを吹き込んで、捨てられたくないから」


理人が眉間にシワを寄せる。

そんな理人の顔を見て、美紗は悲しげに目を伏せた。


「そんなに彼女が大事? 妊娠したから、結婚するだけでしょ」

「きっかけはどうであれ、今は彼女が誰よりも大切だ」

「・・・・・・っ」


美紗は唇を噛み締める。


「バカみたい。理人らしくないわ」


誰とも長続きしなかったくせに。

いつだって、恋愛にのめり込んだりしなかったくせに。

なのに、どうして・・・・・・。


「美紗、香坂に―――真緒に近づくな。二度目はない」