わざわざ電話してくれた礼にと、理人が自宅まで送ってくれると言うので、その好意に甘えることにしたのだが。
(この人とふたりきりって、軽いイジメだわ)
何と言うか、隙の見えない一臣が、彩子は少し・・・・・・かなり苦手だ。
話すこともないし、黙っているのだが、沈黙も中々に居心地が悪い。
「電話していただけて、助かりました」
「え? あぁ。真緒のことだから、連絡しないと思ったので」
理人のためにしたわけではない。
だから、お礼を言われる必要なんてないのだ。
(それにしても、ホントに隙がないわね)
横目で一臣を見つめ、彩子は内心ため息をつく。
こういうタイプの人間とは合わない。
彩子は携帯を見てから、立ち上がる。
「どうかしましたか?」
「帰ります。社長によろしくお伝えください」
この時間ならば、ちょうどいい電車がある。


