不遜な蜜月


「彼女、産婦人科に行ったようです」


以前、真緒にぶつかった時に見た、産婦人科の診察券。

気にしすぎだとあの時は思ったが、やはり気になった。


「産婦人科?」

「あの夜に何があったのかは聞きませんが―――本当に“失態”かもしれません」

「・・・・・・」


扉が開くと、一臣が先に出た。

気づいた理人も、エレベーターから降りる。


「調べてみますか?」

「・・・・・・あぁ、頼む」


杞憂であれば、それでいい。

だが、一臣の言葉が不安を煽る。


あの夜、彼女と会ったのは偶然だ。

彼女が自分の会社の社員だとは、知らなかった。

けれど、彼女が途中で“私の会社の社長に似ている”と言った瞬間、社員だと気づいた。


それでも一夜を共にしたのは―――。


「社長、おはようございます」


社長室に入る前、秘書課の前を通り過ぎる。

玲奈に声をかけられ、理人は我に返った。