電話の向こうから聞こえてきたのは、真緒ではない別の人の声。
というか、女性ですらない。
声の主は、誠だ。
「倒れた?! ちょ、ちょっと待ってください。メモとペン・・・・・・どうぞ」
メモ用紙に、病院の名前と病室の番号を書く。
「わかりました。伝えておきます、はい」
電話を切り、彩子は慌てて上司のデスクへ。
「すみません、香坂が倒れて、今病院なんです」
「倒れた? 病気か何かか?」
「わかりません。それで、あの・・・・・・私、今やってる仕事終わらせたら、早退しますっ」
力強く宣言して、彩子は自分のデスクへ戻る。
空腹も忘れて、ただひたすら、仕事を終わらせることに集中した。
―――・・・・・・。
消毒液の、独特のにおい。
それから、雨の音。
目を覚まして飛び込んできたのは、見覚えのない天井だった。


