不遜な蜜月


「・・・・・・」

「? どうかした?」


急に真緒が黙るので、美紗は不思議に思い顔を上げる。


「いえ、その・・・・・・。嬉しそうに話されるんで」

「・・・・・・」

「気に障ったら、すみません・・・・・・」


深い意味はない。

本当に、ただ純粋にそう思っただけ。

嬉しそうに話す美紗は、“恋”をしているように見えた。


「そうね、嬉しかった」


自分の爪を見つめて、美紗は過去に思いを馳せる。


「理人とは、何度かパーティーで会うことはあったけど、彼は私を覚えてなんかいなかったの」


そんな理人が、一度だけ言ってくれた言葉。


―――綺麗な爪だな。うん、赤が良く似合ってる。


たったそれだけ。

それだけだったけど、嬉しかった。

好きだった赤い色が大好きになって、何となく始めたネイルの仕事が頑張れて。