不遜な蜜月


―――・・・・・・。

その日は少しだけ、気温が低かった。

年末近く、真緒は連休が来る前に仕事を片付けようと思い、今日は残業しようと思っていた。


「彩子の分も買ってくるね」

「よろしく。お金は後で払うから」


彩子は急ぎの仕事があるので、昼食は真緒が買いに行くことにした。





外に出ると、寒さが身に染みる。

雪でも降りそうな、灰色の空。

天気予報では降水確率70%だったから、傘は持ってきた。


「傘、取ってきた方がよかったかな?」


空を見上げつつ、昼休みは無限じゃないと首を振る。

歩きだそうとした時、呼び止められた。


「香坂さん」

「・・・・・・梶谷、さん」


綺麗な人が、綺麗な笑顔を浮かべて手を振っている。

真緒は少しだけ後悔した。

傘を取りに行けば、会わなくて済んだかもしれないのに、と。