香坂 真一と、その妻・菜摘は、仲睦まじい夫婦だった。
テレビの横に、春に行ったという京都旅行の写真が飾ってあって、笑顔のふたりが映っていた。
真一専用らしい湯呑みに、菜緒が急須でお茶を注ぐ。
菜緒は笑って、父親が買った老眼鏡を真緒に見せている。
家族―――そこには確かに、家族の姿があった。
「理人さん、娘をよろしくお願いします」
「はい」
何と言うか、娘はやらん! とまでは言わないが、反対されるのを覚悟だったので、拍子抜けしてしまった。
「親からすれば、やっぱり未婚の母よりも、結婚した方が安心ですから」
菜摘は笑って、自分の湯呑みに新しいお茶を注ぐ。
「それに、菜緒が認めたみたいだからなぁ」
熱いお茶を、慎重に口にする真一。
「彼女の意見が、1番なんですか?」


