不遜な蜜月


「玲奈が? あんまり怖くないわね」

「私じゃなくて、兄さんが」


美紗の顔から、笑顔が消える。


「香坂さんに何かしたら、兄さん、あなたを絶対に許さないと思う」

「・・・・・・覚えておくわ」


玲奈はお釣りはいらないと男前なことを言って、店を出ていく。


「許さないから、ね」


ふと、オレンジ色のマニキュアが手についていることに気づいた。

それは、玲奈が好きな色。


「取れない・・・・・・」


乾いてしまったのだろう。

指で擦っても、消えてくれない。

―――彼女に近づくな。

それを忘れさせないよう、刻み付けるような、オレンジ色。


「・・・・・・取れた」


除光液をつければ、すぐに消えてしまう。

ただ、除光液って独特のにおいがするから、ちょっと、記憶から消すのに時間がかかりそう―――。