強引にでも逃げようと思えば逃げれるだろう。
背中と腰に回された手には力が入っているが、本人は眠っているのだし。
でも、ちょっとくらいならいいかな、なんて甘えが浮かんできて、判断を鈍らせる。
「・・・・・・」
でもやっぱり、いつまでもこうしていられないから、と真緒は起き上がる決意をした。
その瞬間―――。
「・・・・・・真緒」
「え?」
耳元で囁かれた。
今、名前を呼ばれた?
自分の都合のよい幻聴だろうか?
理人を見ても、起きている気配はない。
寝言、なのだろうか。
「・・・・・・社長?」
呼びかけてみた。
けれど、理人は何も言わない。
やっぱり、幻聴だったのだ。
真緒は苦笑して、理人の腕を離そうとする。
すると、眠っている理人が、更に腰を抱き寄せた。


