帰国してそのまま、理人は会社へと直行した。

高層ビルや、道行く人々を見ると、日本に帰ってきた、という気分になる。

だが、理人の表情は暗い。

理由は、まぁ言うまでもないのだが。


「社長。お疲れではありませんか? 社に戻らず、今日はご自宅で休まれては?」


イタリア出張は、予定していたスケジュールよりも、かなりハードな内容だった。

出張旅費などのコスト削減を考えている昨今なので、ついでとばかりにいろいろと仕事を詰め込んだ。

表情には出さないが、相当疲れているはずだ。


「問題ない。気になることも、あるからな」

「・・・・・・わかりました」


一臣は素直に従うことにした。

理人が会社へ直行した理由を、知らないわけではない。

無理して自宅に帰らせれば、事態は余計に悪化しそうな気がする。