不遜な蜜月


逆に気遣われてしまった。


「・・・・・・」


真緒は結局、定時にあがることにした。





エントランスは少し寒くて、マフラーを首に巻く。

同じように帰ろうとする社員がいるなか、反対に会社へ戻る社員もいる。

忘れ物か、彩子のような残業組か。


「部署は知らないわ。でも、香坂って女子社員に会いたいのよ」

「そう言われましても・・・・・・」


不意に、受付嬢の困ったような声が耳に届いた。

彼女も帰りたいだろうに、何やら面倒な来訪者に捕まってしまったようだ。


「香坂って女子社員、いるはずよ」

「・・・・・・香坂?」


もしかして、自分のことだろうか?

思わず、真緒は足を止めてしまった。


(でも、香坂って名前の人、他にもいるだろうし)


自分ではないはず、と歩きだそうとした。