不遜な蜜月


「私のことは、名前くらいは知っているだろう? だが今日は、理人の祖父として挨拶しよう。黒崎 聡志だ。よろしくお願いするよ」

「は、はいっ」


声が震えていたような気がする。

真緒は頭を下げ、ふたりを見つめる。


見ただけでも、聡志が厳しい人だとわかる。

写真などで見た、“会長”そのものだ。

ただ、本人も言った通り、今日は理人の祖父として真緒の前にいるらしく、少し雰囲気が柔らかい、ような気がする。


「えっと、香坂 真緒、と言います」


三度、頭を下げる。

ふたりは優しい眼差しを向けていて、歓迎されている、と解釈しても良さそうだ。


「いろいろ話もあるが、まずは注文を済ませよう。理人、お前はどうする?」


聡志が、理人にワインリストを差し出す。


「いえ、帰りの運転があるので」

「そうか。なら、私も控えておくか」