理人の―――多分、香水だろうか?
この匂いは、何故かつわりが酷くても嫌いにならないまま。
(・・・・・・変な気分)
エレベーターが止まり、ドアが開く。
レストランなどが集まるフロアらしく、賑やかな声が聞こえる。
込み上がって来る吐き気を飲み込み、真緒は理人と共に、約束のレストランへと向かった。
―――レストラン。
個室に案内され、ふたりを出迎えたのは、写真で見たことのある男性と、柔らかな雰囲気の女性。
理人の祖父母だ。
「早かったな」
男性―――理人の祖父であり会長の黒崎 聡志は、孫を見た後、その隣の真緒を見て、満足げに頷いた。
この人が、今目の前にいるこの人が、自分が勤める会社のトップ。
緊張するなと言われる方が無理な話だ。
だって、この人の采配ひとつで、自分のような平社員は簡単にクビになってしまうのだから。


