女性同伴のパーティーなども、同行するのは主に彼女だ。
「工藤さんは、15時には戻るそうです」
「あぁ」
スーツの上着を羽織り、携帯をポケットへ。
ファイルを玲奈に持たせ、社長室を悠然と出ていく。
エレベーターが、静かに動き出す。
「最近は、飲みに行かないのね」
「忙しいからな」
沈黙を破った玲奈は、理人を見ることなく話しかける。
「兄さんは―――」
「ここは会社だ」
理人の淡々とした言葉に、玲奈は傷ついた様子もなく肩を落とす。
玲奈は優秀な秘書である前に、理人の従姉妹だ。
ほとんど知られてはいないが、会社では社長と呼ぶよう徹底している。
が、たまに兄さんと呼んで理人に注意される。
「はいはい。そういうとこ、お祖父ちゃんにそっくりよね」
不満を漏らす玲奈に、理人は苦笑してしまう。
昔から、玲奈は妹みたいで、彼女も自分を兄と慕ってくれる。
それは今でも変わらない。


