彩子は、真緒の心配を打ち消すように、笑顔を向ける。
「そうだよね。うん、ありがとう」
真緒も笑顔を返し、サンドイッチを食べ終えて、仕事を再開することにした。
あの夜から3週間が過ぎ、真緒は休日を利用して実家に足を運んでいた。
ちょうど、姉の菜緒も息子を連れて帰ると言うので、お土産にケーキも買ってきた。
「遼くんはどれがいい?」
「チョコレート! チョコレートのやつがいい」
嬉しそうにケーキを覗き込むのは、菜緒の息子・遼太郎、5歳。
「姉さんは?」
「チーズケーキにしようかなぁ」
姉の菜緒は、大学に在学中に同い年の男性と結婚した。
優しい旦那さんは出張が多く、菜緒は実家に入り浸るのが習慣らしい。
「お母さんは?」
「余ったのでいいわ。買い物に行ってこないと。遼くんも行く?」
遼太郎は行きたい、というように顔を上げたが、ケーキの存在を思い出し、菜緒を見た。


