不遜な蜜月


香るのは、理人の匂い。


「・・・・・・」

「おやすみ、香坂」


呆気とする真緒に微笑を向けて、理人は車に乗り込む。


「・・・・・・おやすみ、なさい」


ドアが閉まってからじゃ、聞こえないのに。

温かいマフラーは、自分がいつも使う物より遥かに肌触りが良い。


「あ・・・・・・」


そういえば、理人の香りで気持ち悪くならなかった。

車内に残るタバコの匂いで少しだけ吐き気が起きたが、それ以降、吐き気は全くない。


(・・・・・・変な、感じ)


冬の風は冷たくて。

マフラーはあったかくて。


理人の匂いは、嫌いじゃなくて―――。










姉の菜緒は、案外簡単に理人と会うことを了承した。

会いたくない、と言われると思っていたので、説得するつもりでいたのだが。


「真緒、今夜は暇?」

「うん、空いてるよ」