「大丈夫、なのか?」
「え?」
心配するような理人の声に、真緒は思わず伏せていた視線を上げる。
「顔色がよくない。工藤から、辛いそうだ、と聞いたんだが・・・・・・」
「だ、大丈夫です・・・・・・っ」
心配をかけまいと、真緒は込み上げてきた吐き気を必死に抑える。
車内には、微かにタバコの匂いがした。
「・・・・・・つわりが落ち着くまで、送迎させる」
「大丈夫ですからっ」
混み合う電車に乗らなくて済むのは、とても助かる。
けれど、そこまで甘えるわけにはいかない。
「つわりが落ち着くまでだ。そんな調子で電車に乗ったら、会社に遅刻するぞ」
「それは・・・・・・」
我慢します、と言いたかった。
でも、言いきれるだけの自信がない。
絶対にいつか、耐え切れなくて電車を降りる。
そしたら、確実に会社には遅刻だ。


