ニコッと笑って、彩子は一臣に小さく頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「はい」
真緒を一臣に任せて、彩子は手を振りながら立ち去る。
「こちらです」
「あ、はい・・・・・・」
彩子にああ言われて、しかもひとり残されてしまっては、嫌だと言いにくい。
仕方なく、真緒は一臣についていくことにした。
高級車のドアを、一臣が恭しく開けてくれる。
「す、すみません」
なんだか申し訳なくて、真緒は急いで車に乗り込む。
「あ・・・・・・」
車内には、理人がいた。
ドアが閉められ、ふたりきり。
「えっと、あの・・・・・・」
「つわりが始まったそうだな」
「は、はい」
大人しく隣に腰を下ろし、真緒は小さく頷く。
つわりのことは、彩子が昼間、一臣に教えた。
それを聞いた一臣が、理人に伝えたのだろう、と容易に想像がつく。


