不遜な蜜月


―――仕事がようやく終わり、真緒は彩子と共にエレベーターに向かう。

冬ということもあって、外は既に暗い。


「ご飯どうする?」


エレベーターのボタンを押して、夕食について考える。

ただ、真緒はあまり乗り気じゃない。


「食べなきゃ倒れるよ?」

「うん・・・・・・っ」


エレベーターに乗り込めば、タバコの香りにまた吐き気が込み上げてくる。


(はぁ・・・・・・)


彩子の言う通り、つわり一日目からこれでは、本当に倒れてしまう。


「香坂さん」


会社の外へ出たところで、名前を呼ばれた。


「工藤さん。お疲れ様です」


真緒が頭を下げると、少し離れた場所に立っていた一臣が歩み寄る。


「ご自宅までお送りします」

「え? でも・・・・・・」


躊躇う真緒の背を、彩子が軽く押す。


「そうしてもらった方がいいわよ。電車、辛いでしょ?」