不遜な蜜月


一臣が小さく頭を下げると、理人は思い出したように口を開いた。


「お前は失態と言うが、俺は―――そう思っていない。じゃあな」


静かにエレベーターの扉は閉まり、理人の姿は見えなくなる。


あれは一夜だけのこと。

失態と呼べる程、深く関わったわけじゃない。

けれど、甘く濃密な一夜であったことだけは、事実だ―――。










パチッ、と部屋の明かりを点ける。

見慣れた自分の部屋だが、なんだか久しぶりに帰ってきた気分だ。


「疲れた・・・・・・」


ベッドに腰を下ろし、真緒はため息をつく。

ひんやりと冷たいシーツに、倒れ込む。


生理整頓された部屋は、所々に女性らしさを窺わせる内装だ。

テーブルの上に置かれた新品のマニキュアは、この前、彩子と一緒に買いに行った。


「・・・・・・あの人の匂い・・・・・・?」


不意に、自分の服から香ったのは、昨夜を思い起こさせるような、そんな匂い。

体を起こし、首に残るキスマークを鏡で見てみる。