「お前が気にすることじゃない。先に帰る」
玲奈の追求から逃れるため、理人は社長室から足早に出る。
秘書課には、玲奈の言った通り、一臣が残っていた。
「お帰りですか?」
「あぁ。残りは明日、早めに出社して片付ける。お前も、あまり叔母さんたちに心配をかけるな?」
玲奈を振り返り微笑んでみせれば、彼女は不機嫌そうにそっぽを向く。
「後は頼む、工藤」
「はい。おやすみなさいませ、社長」
見送りはいらないと、理人はひとりエレベーターへ向かう。
そんな理人を秘書課から見送った後、一臣は不満げな玲奈を見てため息をつく。
「帰らないんですか?」
「会議用の資料の最終確認が済んだら、帰ります」
自分のデスクに乱暴に座り、パソコンに視線を落とす。
その間に、一臣は帰り支度を始める。
「ねぇ、本当に香坂さんは何の用だったんです?」


