小さく頭を下げ、真緒は礼を言う。


「いえ、私は何もしていませんので」


そう言いながら、一臣は名刺を取り出す。


「? なんですか?」

「結婚のお返事をいただけるようでしたら、私にご連絡ください。社長と話せるよう、時間を作ります。それとも、社長の連絡先の方がよろしいでしょうか?」


名刺を仕舞おうとする一臣を、慌てて止める。


「いえ! 工藤さんに連絡します・・・・・・」


おずおずと、真緒は名刺を受け取る。


「・・・・・・工藤さんは、私が社長の結婚相手で良いと思いますか?」


真緒の言葉に、一臣は少し考え込む。

理人になら歯に衣着せぬ物言いでも良いが、真緒が相手だとそうもいかない。


「“社長”に相応しいか、と問われているのであれば、一概には言えません」

「・・・・・・」

「ですが―――」


一臣は一呼吸置き、控え目な笑顔を浮かべた。


「私個人としては、あなたが社長にとっての拠り所となれば、と思います」