ライターを取ろうか悩み、結局、やめた。
彼女は、この結婚を承諾するだろうか?
理人はわかっている。
彼女は自分を好きではない。
そんな彼女に、自分は結婚を申し込んだ。
自己嫌悪を飲み込んで、理人は煙草をテーブルに置く。
「明日も早い。さっさと寝よう」
ネクタイを緩めながら、バスルームへ向かう。
自分の気持ちは決まっている。
後は、真緒の答えを待つだけ。
もし、また断られたら。
その時は、彼女の意志を尊重しよう。
もし、結婚を受け入れるのなら。
その時は―――。
翌日、真緒はいつも通りに出社した。
体調も良いし、熱もない。
「おはようございます」
「え? あ、おはようございます」
挨拶をされて、真緒は慌てて振り返る。
そこには、最早見慣れてしまった一臣の姿があった。
「体調は、よろしいのですか?」
「おかげさまで、元気になりました」