と言うが、美紗の荷物はバッグ一つだ。
「ホテルにあるの。欲しいなら、取りに来て」
「・・・・・・遠慮しておく」
「ふふ、今度持ってくるわ。理人に似合いそうなネクタイを買ったの」
他人が見たら、恋人同士に見えるのかもしれない。
美紗といれば、余計な女に声をかけられる心配もないし、それは美紗も同じだ。
「その様子だと、今夜は泊まらないわね? 独り寝は寂しいんだけど」
「俺じゃなくても、相手はいるだろ。・・・・・・それに、今夜はすぐに帰る」
グラスの酒を飲み干し、マスターにお代わりを頼む。
「何かあったんでしょ? やけ酒?」
「違う。・・・・・・わかってるんだ」
「?」
この胸の焦燥感を一言で現すならば―――嫉妬。
だが、恋愛感情から来る嫉妬という感じではなく。
自分に頼ろうとしない彼女が、他の男を頼ることに納得がいかない。
(俺に言えば、すべて解決するだろ)


