苛立ちにしては妙に胸がざわつく。
焦り? 何の?
自分の感情がよくわからない。
「・・・・・・チッ」
携帯を取り出し、理人は手早く電話をかける。
「車を回せ。出かける」
こういう時は、酒を飲んだ方がいい。
理人は自分にそう言い聞かせて、歩き出した。
行き着けのバーに出向き、違う所に行けばよかったと軽く後悔した。
そういえば昼間、電話がかかってきたんだ、彼女から。
「やっぱり来た」
カウンター席に座るのは、綺麗に着飾った―――梶谷 美紗。
資産家の娘であり、ネイルサロンの経営者でもある。
自慢の爪は、鮮やかな赤で彩られていた。
「強めの酒を」
マスターに頼むと、理人は端の席に腰を下ろす。
「なぁに? 珍しく不機嫌そうね」
美紗は距離を詰め、理人の隣に腰掛ける。
「気のせいだ」
「ふぅん。ま、そういうことにしといてあげる。お土産あるけど、いる?」


