不遜な蜜月


「アジフライかぁ。私は二日酔いだし、あっさりしたものにしようかな」


ズキズキとした痛みは消えても、どことなく本調子と言えない。


「二日酔いねぇ。一体誰と、そんなになるまで飲んだのかしら?」


彩子の試すような視線を無視して、真緒は財布と携帯を手に持つ。

廊下を出れば、ふたりと同じように昼食を食べに向かう社員たちを見かける。


「うわぁ、秘書課だわ」


エントランスを見下ろせば、受付に制服ではないスーツを着こなす女性が数名見えた。

秘書課、だ。


「秘書課の青山 玲奈って、社長のこと狙ってるらしいよねぇ」


他人事のように話しながら、彩子は階段を軽い足取りで下りていく。


チラリと受付で何か話す秘書たちを見て、彩子は興味がなくなったのか、すぐに視線を逸らす。

意識は既に、昼食に集中していた。


「・・・・・・」


真緒は一瞬だけ青山 玲奈を見て、先を行く彩子を早足で追いかけた。