何も言わず、ただケーキを眺める紘哉。 その様子を見た羽兎は、ニッコリと笑い、 「紘哉さん、お誕生日おめでとう」 それだけ言い残すと、その場を去っていった。 辺りを見回すも、霞の姿は見当たらない。 ほんの少しだけ感謝をして、彼はケーキに手をつけた。 口の中に、チョコレートの甘さが広がる。 思わず紘哉の顔が綻ぶ。 「……美味い」 ボソリと呟き、彼は小さく笑った。