チョコケーキ戦争


「ケーキー!!」

「うん。残念だったね」

「やーだー!!」

「ほらほら、泣かないの。今日で5歳でしょ?」

男の子の泣き声が、徐々に大きくなる。
紘哉は自分のトレーと男の子を交互に見た。

そして大きく溜め息をつくと、トレーを持ってその子に近付く。
彼はしゃがみこみ、男の子に目線を合わせた。

「誕生日なのか?」

「う、うん」

「……」

目を擦り、しゃくりあげる。
紘哉は男の子に、自分のトレーを持たせた。

「今度は落とすなよ」

「うん。うん!」

「……お誕生日、おめでとう」

彼は立ち上がると男の子の頭を撫で、何か言いたそうな母親に頭を下げてその場を後にした。