「とりあえず熱いお茶」


自分にはココア、私には濃いめのお茶を淹れてくれたマサくん。


その頃には、ざわつく心も落ち着きを取り戻していた。


お茶の苦味がさらに痛みを緩和する。


「なにから話したらいいかな…」


ソファで隣同士に座るマサくんが、遠くを見つめだした。


「ヤコさんさ、大学時代から目立ってたんだよ」


「知ってる。バカデカイ女だったもん」


私も遠くを見つめる。


ずっと背が高かったからか、いつも男子に紛れて、同等に過ごしてきた。


負けたくなかったし、そのくせ、女の子でもいたかった。


真っ赤なヒールを毎日、大学に履いていったっけ。


頭一つも二つも上から過ごす大学時代。


第一声はこうだ。


「スラッとしてモデルみたい」


始めこそ悪い気はしなかったものの、代わり映えしない褒め言葉。


そんな時、マサくんに出会った。


さぁ、君も言うんだろう。


言うがいい。他の男どもと同じように。


でもマサくんはこう言った。


「足、痛くないんですか?」