プイっ。
顔を背けた。
同時に、ごめんなさいという気持ちにも背く。
「そんなに酔っ払うなんて珍しいね」
そう言って、マサくんが私の耳たぶを指で挟んだ。
そこから伝わる体温。
ただ涙を流しながら、いつまでも溶けない悔しさに歯を食いしばる。
「水でも飲む?話はそっから、ちゃんと聞くから」
立ち上がったマサくんの手を掴み、
「キマって誰?ユマって誰なの?」
フライング。
少し気持ちを落ち着かせ、向かい合い、相手の目を見、話し合う。
ずっとそうしてきたのに、そうできないくらい、私は強くマサくんの手を掴んでいた。
離さない。
絶対に離したくないから。
「ヤコさん、携帯見たの?」
「答えになってない‼ちゃんと答えて‼」
「携帯、勝手に見たんだ」
「それがなによ‼浮気してるくせに‼」
お茶を飲めば良かった。
12%のボジョレーじゃなく、お茶で気を鎮めていれば、また違った話し合いができたのに。
もう、後戻りはできない。
もう、ダメかもしれない…。



