その瞬間。

「っっっ!」

まるで硝子が割れるような音。

漆黒の世界は粉々に砕け散り、小岩井、雪菜、そして日音子は元いた廊下に戻る。

「ひあっ、ひゃあぁあぁっ…!」

無意識のうちにとはいえ、恐怖のあまり遠ざけた死神と雪女がまた目の前に。

日音子は怯えるが。

「日音子さんっ」

雪菜が自らの肩掛けで、日音子の小さな身を包み込む。

「あ…」

雪女の持ち物とは思えぬ、柔らかく温かな感触。

持ち主の、そして送り主の優しさが伝わってくるようだった。

「ね?」

雪菜は、ほっこりするような微笑みを浮かべる。

「天神学園にいる人外は、怖い事ないですよ?」