美咲と結局10時頃まで遊んでしまい、帰宅時間は半を回っていた。
いつもいれているポーチの中から家の鍵を出す。

「ただいまー」
嫌な予感。
暗い部屋の中手探りで明かりをつけるスイッチを探す。

やっとのことで見つけるとリビングのソファで横たわるお母さんがいた。
周りには酒の瓶や缶が散らばっている。

「んー」
明るくなったのが分かったのか起き出した。キャミソール1枚でいるお母さんの姿は「女」の匂いがして嫌だった。

「ただいま」
あたしは無愛想にそう言い、ブレザーを椅子に掛け、冷蔵庫から麦茶を出した。
「おかえりー。お腹へったぁ。何かつくってぇ」
背伸びをしながらそんなことを猫なで声で言うお母さんはもう母親と認めるのも辛くなってきた。

ただでさえ今日は辛い日なのに。

「勝手に作って食べてよ。あたし寝るから」
そう言い放ちあたしは自室へ入った。自宅で1番おちつくのは自室しかない。そんな家に帰りたくもないが行くところもないのだ。

ふと、あたしが中学のときの卒業式に淳也と2人で写ってる写真立てが目に入った。
唯一あたしが持ってる淳也の写真。
それを見た瞬間涙が零れ落ちた。

一粒。そしてまた一粒と…

悲しくもないのに
苦しくもないのに

何で泣いてるんだろう。

そっか…あたしの好きは淳也に何ひとつ届いてないからか。
伝える勇気すら無かったあたしは、淳也の大切な人になれるチャンスが何回もあったハズなのに自ら棄権し続けてしまったんだ。

心底後悔した。
「気付いて」だなんてそんなの鈍感な淳也にはわかるわけないのに。

一杯一杯泣いた。
気付いたら明け方くらいになっており、一睡もせず2日目を迎えてしまった。