君が教えてくれたのは、たくさんの奇跡でした。

「709号室の、鳥越さんが……――」







その言葉を聞いた瞬間、俺は走り出した。







人違いであればいいと思っていた。



杏奈に似た、別人であればいいと思った。







――「鳥越さんが、手首を切って血を流しています」