「あの猫だよね…?」
「そう。タマって名前」
あたしに近寄ってきたタマを撫でる。
あ…怪我が治ってる…。
「ほら希美先輩がここに連れてきてくれたじゃん?」
「うん、ここの病院しかあたし知らなかったから…」
「最初、タマは野良猫だったわけ。野良猫助ける人ってめったにいない。ほとんどみんな見てないふりをする。」
そうかもしれない…。
タマが酷い傷だったのに周りの人は知らないふりして傍を歩いてた…
「俺、希美先輩がタマをここに連れてきたあと親に頼み込んだんだ。ここで飼ってくれって…」
そうだったんだ…。
爽があの時の猫…タマを飼ってくれたんだ…。
「あたしもあの時…タマを引き取ろうとは思ったんだけどね…」
「親父が未成年の子には簡単には渡せないって言った…だよね?」
あたしはそう言われ頷いた。
「親父そういう時は厳しいからな…」
「でも爽のお父さん、ちゃんと考えて言ってくれたんだと思う。里親も探してくれるって言ってたから…。」
「里親探すって聞く前に俺が頼み込んだからね」
そう言って爽はタマの頭を撫でて笑った。

