時雨side





「さっき時雨の携帯鳴ってたけど、急ぎの用事かもしれないし見てみたら?」




偶然、同じところで働くようになった冬哉が俺に耳打ちでこっそり教えてくれた。




俺は店長に、少しだけ持ち場を冬哉に変わってもらうと言って事務員専用の自分のロッカーをあけた。




そこには希美の友達の麻美というやつから電話が何度も鳴っていた。





──ピリリリリッ




再び電話が鳴って俺が電話に出た瞬間、大きな声が耳に届いた。




『遅いわよっ!!』


くそ…大声出し過ぎで耳痛ぇつーの。




「…なんだよ」





『希美が!!希美が知らない奴に連れてかれたっ!!助けて…っ!!』





普段のあいつからは考えられない声の大きさに俺はやっと理解できた。





「連れて行かれた場所は?!」





『分かんない…っ!せめてでもあんたに連絡しなきゃって思って走って逃げちゃったから…っ』




二人とも連れていかれたら、希美が誘拐されたとか俺に知らされることはなかったんだし
こいつの言うことは懸命な判断だよな。





「とりあえず、落ち着け。どんなやつが希美を連れて行った?」





『頭が金髪で…、服は制服だった…!確かあれは…っ佐木田高校のだと想うっ!!』




佐木田高校…。



俺が前に喧嘩したやつらじゃねぇか…。




「わかった。俺は希美を助けに行くから早くオマエは家に帰れ。」





俺はそう言って電話を切った。