そして時はすぐに経ち、今は帰り道。
もちろん隣には時雨。
あたしの左手は時雨の右手に強く握られている。
好きって自覚した時の、この感覚はいつもと全然違う。
ずっとドキドキしてて、手離したくないと思った。
「今日はやけに大人しいな?」
「そ、そう?…あ。今日は時雨の家寄れない」
「なんで?…また夜遊びとかするんじゃねぇだろうな?」
時雨の目は鋭くあたしを見た。
「違うよ。…今日はお母さんが帰ってくるみたいなの。…さっきメールが入ってた」
大事な資料が家にあるから、それを持って翌日の会社に出勤するって。
翌日ってことは、今日は家にいるってことだよね。
あたしはそう解釈してるけど。
「そっか…。なんかあったらすぐ電話でもメールでもしてこいよ?」
「うん…。」
あたしは繋がれたお互いの手を少しだけぎゅっと強く握った。
少しだけ、お母さんと話せる勇気がでますように…って。

