【完】Rose.



「だからこそ、私の側でもっと輝いて、ご褒美の笑顔を、振り撒くべきなんです」


振り撒くって、そんなこと。


「私は貴女を信頼しています。そして、貴女から信頼されたい。…やっと、近付けたんです。無理矢理、課長職から秘書にしたんです」


…無理矢理だったの。


「…貴女に、側にいてもらわないと、俺はどうしていいかわからない。もし秘書にならないなんて言われたら、社内の恥です」


恥だなんて、大袈裟。


「貴女がいてくれれば、今よりもっと飛躍できるんです」


貴方が、飛躍?…


「…専務が、ですか?」


もう、飛躍しすぎているくらいなのに。


「はい。もっともっと、空高く、上がりたい。…大切な人を守れる強さは、いくらあっても足りませんから」


ねぇ、…大切な人って、誰のこと?


「…っ、大切って」


涙で、貴方の顔がよく見えない。


「…貴女以外に、誰がいますか」


大切だなんて言葉をもらうのは、人生で二度目。


「…私、そんなこと、言われたら、」


期待してしまう。