「いつだったかは、内緒です」
いやぁ、あの時は睨まれたなぁ。なんて言っている専務をよそに。
一度決壊して脆くなった目元からは、あふれる涙が止まらない。
ねぇ、私、これで、よかったの?
失敗したってずっと思ってた。
もっと皆にありがとうって言えばよかった。
私の独りよがりだったって、ずっと思ってた。
なのに、今私の掌にあるメモには、温かい、優しい言葉ばかり。
「…喜んで、くださいね。皆、貴女の秘書室への移動が決まった時、…専務室の電話がパンクするんじゃないかってくらい、私に念押しして来ましたから」
念押し?なにを?
「……?」
「…貴方の下心は見え見えですから。…絶対に、大切にしてください。って。すみれ親衛隊が、目を光らせてますからね。って。クスっ、…怖かったですよー。本当に」
…なんなの、もう。
「…どうして、そんなに、」
優しいの。
こんな私に、…私は、皆を大切に出来なかったのに。
「…すみれさんは、皆にお礼をすべきだと思うんです」
…お礼?
それは、したいけれど。

