【完】Rose.



「その時から、貴女は学内でも有名人だった。…自覚はありました?」


ふふ、と微笑む専務。


「…自覚ですか」


あの頃は、なりふり構わず目の前にあることに没頭していた記憶しか無い。


まぁ、社会人になってもほとんど変わってないけれど。


「…すみません。そんなこと、考えもしませんでした」


「…そうでしょうね。…貴女が気づいていない間に、私の周りの人間はどうにか貴女と接点を持とうと、必死になっていましたよ」


接点?


「どうして、ですか?」


「…貴女は今も自覚が無いようですが、…一度だけミスコンで準優勝、したでしょう?」


あぁ、そんなこと、あったような無かったような。


「…はぁ、それが関係するんですか?」


「貴女は、あの頃もそんな感じだったでしょう?」


「はい。…あえて言えば、面倒臭かったです」


何の意味も無いと思っていた、催し。


自分を誇って、ちやほやされて、ただそれだけ。


何が楽しいのかと、毎回思っていた。


「…貴女はそうでも、周りは放って置かない。頭も良くて美しい。…オマケに自分達のアピールにも乗らない、振り向かせたくなる。…男なんて、そういうものですから」