【完】Rose.



その、シンプルで真っ直ぐな言葉に、なにも言えなくなってしまう。


貴女がよかった、なんて、…はじめて言われた。


「ここへ来る前も、秘書が出来るのかと、言っておられましたね」


「…はい」


昔から大嫌いだった、自信の持てない私。


「そのことについて何か言う前に、…私が貴女に秘書をお願いしたい、そう思った経緯からお話しましょうか」


「…はい」


「…貴女のことは、実はずっと前から知っていたんです。…すみれさんは、私のことは全然ご存知なかったようですけど」


知っていた?


「…いつから、ですか?」


「すみれさんが入社されてから、ではなく。…大学時代から、見ていました」


見ていましたって、大学時代?


「…じゃあ専務は、私の」


「はい。二つ上の先輩でした」


…全っ然、知らなかった…。


「…どうして、私のこと?」


「初めて知ったのは、貴女が入学式で新入生代表の挨拶をした時。…女性が、代表になるのは初めてでしたから」


代表の挨拶。


トップの成績で入学した者にだけ、与えられる権利。


「友達と、サークルの勧誘も兼ねて、後は好奇心にかられて覗きに行ったんです」