異動が決まってからの専務の行動は、驚く程素早かった。


まるで、私が異動するとわかっていたかのような物事の進め方。


私が動かなくても、いや、動けなくても、順調に滞りなく異動の準備は進んで行った。


そして気が付けば次の日に迫った、秘書としての勤務。


バスタブに浸かりながら、明日のことを考える。


…服の準備まで、専務にしてもらっちゃったよ。


洋服から、カバンに靴、…アクセサリーまで。


それらは全て一級品で。


到底、私が簡単に買えるような物では無くて、困ります、と何度言ったかわからない。


『私からの異動祝いですから。気兼ね無く』


…気兼ねするっちゅーねん!


揃えられた物は全部、一度は憧れたブランドで、給料の何ヶ月分か注ぎ込んで手に入れたブランドの物もあった。


けれどそれは何年も前の話しで、今の私には、似合う以前の問題。


とりあえず、付け焼き刃でもエステとネイルに行っておいてよかった…。


専務から、異動のために色々と疲れただろうからと、三日間お休みを頂いた。


すぐさま美容院とエステを予約して、少しはマシになった気がする、けれど…。