30分もしないうちに、おびただしい数のダンプ、ショベルカー、ブルドーザー、そして大人数の作業員がこの場所に集結していた。


その作業員達に、幹事長は拡声器片手に大声で叫ぶ。


「諸君!正義は我にあり!掘って、掘って、掘りまくれえええぇぇぇ~~~~~っ!」


幹事長の号令と共に、重機の群が一斉に穴を掘り返す。


勝手にこんな事をして、果たして良いのだろうか………いや、絶対にマズイだろう。


その様子を、先程の学者は呆然とした表情で見つめていた。


穴を掘り始めてから、一時間程が経過した。


掻き出した膨大な土の量から、ずいぶんと掘り進めたようだった。


「お~い!マナミちゃ~ん、どれ位掘ればいいのかな~?」


それ、私に聞きます?


すると、その時だった。


穴の中で作業をしていた作業員達の間から、大きなどよめきが聞こえた。


「うおおお~~っ!なんだこりゃあああ~~っ!」


突然、穴の中から大きな水柱が上がった。


「うわっ!」


私から離れた場所で穴の様子を覗き込んでいた幹事長に、その水がおもいっきりかかる。


「熱っ!なんだこれ!」


「あれは、温泉ですな………驚いた、こんな所から温泉が出るとは………」


そう呟いたのは、私の隣に立っていた先程の学者だった。





温泉………もしかしたら、この温泉がこの町を原発の呪縛から解き放つ起爆剤になるかもしれない。


今の段階では軽率な事は言えないが、私には何故かそんな予感がした。


そして、その希望のきっかけを作ったのが、あの幹事長とは……私は、びしょ濡れになったスーツを脱いで、それを両手であおいでいる幹事長に姿を見て、何だか可笑しく思えた。


「幹事長!気を付けて下さい!もしかしたら、核燃料の冷却水かもしれません!放射能が漏れているかもしれませんよ!」


「ウソ?マジで!
ヤバイ~頭がハゲる~~!」


そんな変化を知らないまま、幹事長は私のいたずらに、ずいぶんと慌てた様子で、いつまでも走り回っていた。



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