「しかし、困った事になりましたね……」


総理の『消費税増税宣言』がテレビで報道され、日本中が大騒ぎになっている午後八時頃……
私と幹事長は、幹事長の馴染みのキャバクラ『ラビット』で今後の対応について話し合っていた。


何故『キャバクラ』なのかと問われれば、この店には今、幹事長がお気に入りのキャバ嬢『あさみちゃん』がいるからとしか答えようが無い。


「しかし、このタイミングで増税するかね……次の選挙は民民党大敗するよ……」


うんざりした表情で煙草の煙を吐き出す幹事長に、あさみちゃんが興味深そうに尋ねてきた。


「ええーーーっ!! 消費税上がるんだあーー!!アタシ知らなかった!!」


「知らなかったの?今頃はテレビで大騒ぎしてるよ」


「だって、今日早番だからテレビなんて観てないもん」


「そうなんだ~あさみちゃんは働き者だね~♪」


「それでね………」


「へえ~そうなんだ~♪」



こんな風に幹事長とあさみちゃんの二人の世界に入ってしまうと、私には入り込む余地が無い。


できればこういう政治の話を、キャバクラでするのは勘弁してもらいたい。


「時にマナミちゃん、君はこれからどうするつもりだい?」


話が一段落すると、幹事長は私にそう訊いてきた。


「どうする……とは?」


「民民党はそろそろヤバイよ。
離党とか考えてる?」


「いや、まだそこまでは……
まだ総理の真意もよく分かっていないですからね。
そもそも何で今、増税なのか?」


「そんなの、財務省の洗脳に決まっているよ!」


「洗脳ですか?」


「そう、洗脳。総理は元財務大臣だったろ?
きっと、昼寝とかしている時に事務次官が耳元でずっと囁いてたんだよ。『増税するぞ~増税するぞ~修行するぞ~増税するぞ~』ってね」


「どこかのカルト教団ですかっ!!」


「実際、カルト教団より手強いよ……法律で取り締まれないからね」



確かに、幹事長の言う通り官僚は手強い………



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