「いらっしゃいませ~」 13時を少し過ぎた頃。 背の高い人影が、入口の向こうに現れる。 ガラス戸に赤に白抜きされた『菜華』の 向こう側で俯き気味になるのは、 頭をぶつけないようにするためなんだろう。 ここに来る中年男性のほとんどと違って、 彼はすらりと背が高かった。 ここで働くようになって初めて、 やって来た彼を見た時。 私は手が震えてしまい、運んだ水を こぼしてしまったりしたものだ。