「はい」 私は泣きながら頭を下げ、洋子さんの 手を握り返した。 「ありがとうございます」 『このご恩は忘れません』 と、時代劇のようなセリフが出そうに なり、私はまた、深く頭を下げた。 膝に頭をこすりつけんばかりの私を押し とどめ、洋子さんは照れくさそうに笑う。 「もういいって。そんなに頭、下げて もらうほどの部屋じゃないんだからさ」